監督・脚本:アイラ・サックス 出演:ジョン・リスゴー『愛と追憶の日々』、アルフレッド・モリーナ『スパイダーマン2』、マリサ・トメイ『いとこのビニー』

イントロダクション&ストーリー

これは、本当に大切なものは何かをそっと教えてくれる、“ギフト”のような物語。 切なく、そしてとてつもなく美しい、今年のベストフィルム。paper magazine ジョン・リスゴーとアルフレッド・モリーナ、主演の二人が文句なしに美しい screen daily ぼくらは結婚して、家もお金も仕事も失った。それでもまるごと愛おしい、我らが人生!
ニューヨーク、マンハッタン。39年来連れ添ってきた画家のベンと音楽教師のジョージは念願かなって結婚した。周囲のあたたかな祝福を受けて、二人の新たな生活は順調に始まるはずだったが――。同性同士の入籍が理由でジョージは仕事をクビになり、これまで絶妙なバランスで保たれていた生活はいとも簡単に崩れてしまう。保険、年金、不動産……現実問題が次々と押し寄せ、二人は長年暮らしたアパートメントを離れ、新婚早々に別居を余儀なくされる。ベンはブルックリンに住む甥のもとへ、ジョージはアパートの隣人で警官のゲイカップルのもとへ。社会からの根強い差別と肩身の狭い居候生活に心が押しつぶされそうになりながら、ベンとジョージはありのままの自分を理解してくれる人がいることの幸福に改めて気づくのだった。
2011年に同性婚が合法となったニューヨークで繰り広げられる上質な大人の悲喜劇。物質的な豊かさを失ったカップルが見つける、何よりも価値ある幸せとは? 人生でほんとうに大切なものは何かをそっと教えてくれる、思いがけない“ギフト”のような素敵な映画が誕生した。
ニューヨークの街並みとショパンの調べ。実力派の名優たちが奏でる爽快な人間賛歌
画家のベン役に『愛と追憶の日々』のジョン・リスゴー、音楽家のジョージ役に『スパイダーマン2』のアルフレッド・モリーナ、さらにベンの親戚の女流小説家には『いとこのビニー』でアカデミー賞®助演女優賞に輝いたマリサ・トメイと、いずれも実力を備えた名優たちの競演は、本作の大きな見どころの一つとなっている。彼らの魅力を最大限に活かしつつ、「人生にとって本当に大切なものとは」という普遍的なテーマを、洗練された節度ある演出で丁寧に紡いだのは、『あぁ、結婚生活』のアイラ・サックス。監督のみならず共同脚本も手がけた本作では、老カップルが結婚を機に遭遇する不幸せと幸せを、時折ユーモアをまじえながら描き出した。
本作のもう一つの主役と言えるのが、マンハッタンのクラシックなアパートメントや、ブルックリンの屋上から見る景色など、随所に登場するニューヨークの美しい街並み。そして、ショパン、ベートーベン、ヘンリク・ヴィエニャフスキといったクラシックの名曲の数々が、主人公たちの人生を優しく抱きしめるかのように全編を流れるのも心地よい。

キャスト

ジョン・リスゴー John Lithgow (ベン役)
1945年10月19日、アメリカ・ニューヨーク州ロチェスター生まれ。1973年に、「The Changing Room」でブロードウェイの初舞台を踏み、同作でトニー賞助演男優賞(演劇部門)を受賞。ボブ・フォッシー監督『オール・ザット・ジャズ』(79)などを経て出演した『ガープの世界』(82/ジョージ・ロイ・ヒル監督)、『愛と追憶の日々』(83/ジェームズ・L・ブルックス監督)で2年連続アカデミー賞助演男優賞にノミネートされ一躍注目を浴びる。舞台ではトニー賞を2度受賞、テレビ出演ではエミー賞を5度受賞するなど、映画・テレビ・舞台と幅広く活躍し、いずれのジャンルでも高い評価を得ている実力派。そのほかの映画出演作に、『ハリーとヘンダスン一家』(87/ウィリアム・ディア監督)、『レイジング・ケイン』(92/ブライアン・デ・パルマ監督)、『猿の惑星: 創世記』(11/ルパート・ワイアット監督)、『インターステラー』(14/クリストファー・ノーラン監督)など。また、絵本作家としても知られている。 アルフレッド・モリーナ Alfred Molina (ジョージ役)
1953年5月24日、イギリス・ロンドン生まれ。ロンドンにあるギルドホール音楽演劇学校で学び、舞台俳優として、英国国立劇場でテネシー・ウィリアムズ「イグアナの夜」やデヴィッド・マメットの「Speed-the-Plow」などに出演、高い評価を受けた。映画では、『フリーダ』(02/ジュリー・テイモア監督)におけるフリーダの夫ディエゴ・リベラ役の演技により英国アカデミー賞(BAFTA)助演男優賞、ブロードキャスト映画批評家賞、シカゴ映画批評家協会賞などを受賞。サム・ライミ監督はこの『フリーダ』での演技を見て『スパイダーマン2』(04)のドクター・オクトパス役にモリーナを抜擢したと言われている。
そのほかの出演作に、『ショコラ』(00/ラッセ・ハルストレム監督)、『コーヒー&シガレッツ』(03/ジム・ジャームッシュ監督)、『ダ・ヴィンチ・コード』(06/ロン・ハワード監督)、『モンスターズ・ユニバーシティ』(13/ダン・スキャンロン監督 *声の出演)などがある。 マリサ・トメイ Marisa Tomei (ケイト役)
1964年12月4日、アメリカ・ニューヨークのブルックリン生まれ。ボストン大学1年生の時、テレビドラマ「As the World Turns」に出演したことがきっかけで映画界に進出、『フラミンゴキッド』(84/ゲイリー・マーシャル監督)でデビューをはたす。その後『オスカー』(91/ジョン・ランディス監督)などを経て、ジョー・ペシの婚約者を演じた『いとこのビニー』(92/ジョナサン・リン監督)でアカデミー賞®助演女優賞を受賞し注目を集めた。そのほかの出演作に、『チャーリー』(93/リチャード・アッテンボロー監督)、『イン・ザ・ベッドルーム』(01/トッド・フィールド監督)、『N.Y.式ハッピー・セラピー』(03/ピーター・シーガル監督)、『その土曜日、7時58分』(07/シドニー・ルメット監督)、『レスラー』(08/ダーレン・アロノフスキー監督)、『リンカーン弁護士』(11/ブラッド・ファーマン監督)、『Re:LIFE~リライフ~』(14/マーク・ローレンス監督)などがあり、コメディからシリアスまで多彩に演じ分ける名女優。 ダーレン・バロウズ Darren E. Burrows (エリオット役)
1966年9月12日、アメリカ・カンザス州生まれ。おもな映画出演作に、『カジュアリティーズ』(89/ブライアン・デ・パル監督)、『クライ・ベイビー』(90/ジョン・ウォーターズ監督)、『アミステッド』(97/スティーヴン・スピルバーグ監督)、『ハイロー・カントリー』(98/スティーヴン・フリアーズ監督)などがあり、アイラ・サックス監督の「Forty shades of blue」(05 *未公開)にも出演。テレビでも活躍し、第6シリーズまで製作された人気ドラマ「たどりつけばアラスカ」(90-95)のエド・チグリアク役が有名。チャーリー・ターハン Charlie Tahan (ジョーイ役)
1997年12月21日、アメリカ・ニュージャージー州生まれ。2007年から子役として活躍し、ウィル・スミス主演の『アイ・アム・レジェンド』(07/フランシス・ローレンス監督)で映画デビュー後は、『最後の初恋』(08/ジョージ・C・ウルフ監督)ではダイアン・レインの息子を、『水曜日のエミリア』(09/ドン・ルース監督)ではナタリー・ポートマンの義理の息子を演じるなど大物女優たちと次々に共演。『きみがくれた未来』(10/バー・スティアーズ監督)ではザック・エフロン演じるチャーリーの弟サム役を演じ、高い評価を得る。『フランケンウィニー』(12/ティム・バートン監督)では主役のビクターの声を演じ、声優としての才能も開花させた。 シャイアン・ジャクソン Cheyenne Jackson (テッド役)
1975年7月12日、アメリカ・アイダホ州生まれ。テレビドラマ「glee/グリー」のダスティン・グールスビー役や、「30 ROCK/サーティー・ロック」のダニー・ベーカー役など、おもにテレビドラマや舞台で俳優として活躍する傍ら、歌手・作曲家としての活動も。映画出演作には、『ユナイテッド93』(06/ポール・グリーングラス監督)、『恋するリベラーチェ』(13/スティーブン・ソダーバーグ監督)がある。プライベートではゲイを公表し、2011年に長年のパートナーと結婚、その後離婚し、2014年に別の男性と再婚している。
マニー・ペレス Manny Perez (ロベルト役)
1969年5月5日、ドミニカ共和国サンティアゴ出身。おもな映画出演作に『クルックリン』(94/スパイク・リー監督)、『戦火の勇気』(96/エドワード・ズウィック監督)、『必殺処刑人 リベンジ』(07/ジョシュア&ジェフリー・クルック監督)など。プロデューサー、脚本家としても知られ、ミラノ国際映画祭で最優秀男優賞に輝いた「Washington Heights」(02/アルフレード・ロドリゲス監督 *未公開)では出演、共同脚本、製作を、『処刑人ソガの凄まじい人生』(09/ジョシュ・クルック監督)では出演・脚本を務めている。 クリスチャン・コールソン Christian Colson (イアン役)
1978年10月3日生まれ、イギリス出身。ケンブリッジ大学卒。『ハリー・ポッターと秘密の部屋』(02/クリス・コロンバス監督)のトム・マールヴォロ・リドル役で注目を集める。人気ドラマシリーズ「ゴシップガール シーズン4」(10)、「グッド・ワイフ シーズン3」(11)にも出演するなどテレビでも活躍中。

スタッフ

監督・脚本:アイラ・サックス Ira Sachs
1965年11月21日、テネシー州メンフィス生まれ。マクダウェル・アーティスト・コロニーの01年度会員で、数本の短編を手がけたのち『ミシシッピの夜』(原題:The Delta)で長編映画デビューをはたす。この作品はアメリカ南部に暮らす白人の少年と黒人の少年との同性愛を描き、日本でも98年の第7回東京国際レズビアン&ゲイ映画祭にて上映された。05年の「Forty shades of blue」ではサンダンス映画祭審査員賞を受賞。日本で公開された作品に、クリス・クーパー、ピアース・ブロスナン、パトリシア・クラークソン、レイチェル・マクアダムスらが出演したクラシカルなブラック・コメディ『ああ、結婚生活』がある。サックス監督はゲイであることを公表しており、劇中でベンが描く絵画の数々は監督のパートナーである画家のボリス・トレスによるもの。

【フィルモグラフィ】
1993 「Lady」(短編)
1997 『ミシシッピの夜』
2002 「Underground zero」
2005 「Forty shades of blue」*サンダンス映画祭審査員賞
2007 『ああ、結婚生活』
2010 「Last address」(ドキュメンタリー短編)
2012 「Keep the lights on」 ■Director’s Note

本作は、人生の様々な時点で愛について私たちが経験する出来事と、私たちが愛に期待するものを描く、数世代間にわたる物語です。物語の中心はベン(ジョン・リスゴー)とジョージ(アルフレッド・モリーナ)の長期にわたる関係です。彼らは39年間、共に生きてきて、最初の場面で結婚し、次の場面では家を失います。一生を一緒に過ごしてきて、今や老境に達した二人にとって愛とはどのようなものなのか。ベンとジョージにとって、愛とは、物質的な面と人間関係の面での喪失によって浮き彫りとなりますが、この喪失が、これほどまで長い年月にわたって彼らが互いに抱いてきた愛の本当の中身に、どのように明るい光を投げかけることができるのか。

マリサ・トメイとダーレン・バロウズが演じる四十代後半の夫婦ケイトとエリオットの姿に私たちが見るのは、危機に瀕した愛です。彼らは中年になって、本当の意味で自分に向き合い、驚きます。彼らの息子は思春期で、突然叔父であるベンが現れたことで、一家の安定した生活は揺らぎます。そしてそれまで真実だと思ってきたことのすべてが、確かなものには見えなくなってくるのです。

ケイトとエリオットの息子、ジョーイ(チャーリー・ターハン)の中に私たちが見るのはまだ若い愛です。彼は他人の関係を見るなかで、愛の現実を学んでゆくのです。ジョーイは彼の両親、そしてベンとジョージを観察します。子どもは人の言葉ではなく、行動から学ぶと言われます。色々な意味で本作は成長の物語であり、ティーンエイジの少年が大人になってゆく過程、自分の周囲のさまざまな人間関係から学んでゆくことを辿るのです。

そして本作は、私たちがどうやって生きていくことを学ぶのか、どうやって私たちが人から学び、また人に教えてゆくのか、を巡る物語でもあります。教会はどんなふうに私たちに愛を教えるのか。ピアノ教師はどんなふうに私たちに音楽を教えるのか。芸術家はどんなふうに私たちにものの見方を教えてくれるのか。映画はどんなふうに私たちの本当の姿を教えてくれるのか。そして愛――この奇妙で美しいものは、どんなふうに見えるのか。そんなことを描く物語なのです。 脚本:マウリツィオ・ザカリアス 
マウリツィオ・ザカリアスはリオ・デ・ジャネイロ生まれ、南カリフォルニア大でシナリオ・ライティングで芸術修士を取得、ワーナー・ブラザーズの奨学金を得る。カリン・アイヌー監督『スエリーの青空』(06)など。アイラ・サックスとは「Keep the lights on」で初めてタッグを組んだ。

撮影:クリストス・ヴードゥーリス
クリストス・ヴードゥーリスは40ヵ国で長編、短編、テレビ・ドキュメンタリー、テレビ・コマーシャルを撮影。近作に、リチャード・リンクレイターの世評高いロマンティックな三部作の第三作目『ビフォア・ミッドナイト』(13)。ヨルゴス・ランティモス『Alps』(11)は2011年度ヴェネチア映画祭オセラ賞、2012年シドニー映画祭ファースト・アワード、トロント映画祭オフィシャル・セレクションなどを受賞。

製作総指揮:ジム・スティーヴンズ&エイブラハム・ブラウン 
二人はLGBT(性的少数者を限定的に指す言葉。レズビアン<女性同性愛者>、ゲイ<男性同性愛者>、バイセクシュアル<両性愛者>、トランスジェンダー<心と体の性の不一致>の頭文字をとった総称)に関する映画の主導的配給会社「ウルフ・ヴィデオ」の監督役。ジムは、世界で最も歴史があり最大にして広く認知されているLGBT映画祭「フレームライン」の委員長を務めた。エイブラハムは弁護士でもあり、サンフランシスコの「GLBT歴史ソサエティ」の監督委員会メンバーも務めている。